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ミュシャの最高傑作《スラヴ叙事詩》 ついに来日!(その6)

こんにちは、チェコの伝統藍染めヴィオルカです。

「ミュシャ展」の入場者数が今週、10万人を超えたそうです。「スラヴ叙事詩」は広く関心を呼んでいます。

先週お伝えした通り、チェコからうれしいお知らせが届きました。ユネスコ無形文化遺産の委員会に「藍染めの伝統技術」が正式に提案されました。提案はチェコを含む中欧5か国共同で行なわれました。今後、ユネスコの委員会における審議を経て、正式登録の運びとなります。

今回は、ミュシャと藍染めの接点について少しだけお話したいと思います。

「藍染めの伝統技術」は、現在も残る数少ない藍染め工房に伝えられているもので、18世紀中ごろ、チェコやモラヴィアの地方を中心に広まりました。

ヴィオルカが日本に紹介している藍染め工房は、南モラヴィアにあり、ミュシャの生まれ故郷イヴァンチツェから数十キロ離れた場所にあります。子供のころのミュシャは、身近に藍染めを見ていたのではないかと思われます。

藍染めは、地域ごとに特色のある民族衣装に仕立てられていました。ミュシャの描く女性像は、1900年以降、洗練され、時に官能的な表情を見せるものから、次第に祖国への愛、郷土に寄せる思慕を感じさせる、親しみのこもった、民族衣装を身に着けた少女たちの姿へと変化してゆきます。その民族衣装には、藍染めを使ったものがありました。

1911年の「モラヴィア教師合唱団」ポスターでは、モラヴィアのキヨフ地方の民族衣装を着けた少女が描かれています。

Alphonse Mucha Mucha-Moravian Teachers' Choir-1911

- Art Renewal Center Museum, image 4444 commons.wikimedia

ポスターのデザインは、女性を中心に置いたまさにミュシャ様式ですが、描かれているのは、民族衣装を身に着けた少女で、ゆったりとしたブラウスに、色とりどりの刺しゅうを施し、裾にレースをつけた美しいスカートをつけ、頭には「トルコ風の布」と呼ばれる赤いスカーフを巻き、鳥の歌声(合唱団の歌声)に耳を澄ませています。ミュシャは、民族衣装に国のアイデンティティを認めて特別な思いを持っていたうえに、民族衣装のコレクションをしていました。そして、まさにここに描かれたキヨフのスカートは、ミュシャのコレクションに残っており、その生地は藍染めされたものなのです。数年前、日本でも公開されましたが、深い藍色が大変美しく残っているものでした。

このような刺繍の入ったスカートの装飾を模して、藍染めにも、色とりどりの模様を入れる技法が開発されましたが、大変な手間がかかるもので、プリント技法の発達により、残念ながら現在ではその技法は失われています。

「ミュシャ展」には、「モラヴィア教師合唱団」ポスターは残念ながら出品されていませんが、民族衣装を身に着けた少女の姿はたくさんみられます。ぜひ、描かれた衣装のデザイン、リボンや刺繍といった装飾にも注目して作品を見てみてくださいね。

そして、モラヴィアに今でも伝わる貴重な藍染め技術について、知っていただく機会になればヴィオルカはとてもうれしいです。

今日は、このへんで。続きをお楽しみに。

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