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ミュシャの最高傑作《スラヴ叙事詩》 ついに来日!(その1)

こんにちは、チェコの伝統藍染めヴィオルカです。

いよいよアルフォンス・ミュシャの《スラヴ叙事詩》連作20点がチェコから日本にやってきます。作品の第一便を積み込んだ飛行機がプラハから飛び立つとか。作品完成から今まで、全20点がチェコ国外に揃って貸し出しされるのは、初めてという、貴重な機会です。

でも、アール・ヌーヴォー・スタイルのミュシャは知っているけれど、《スラヴ叙事詩》ってどんな作品なの?難解な歴史物語や、なにか深遠なメッセージが描かれているのでは?と身構えている方も多いのではないでしょうか。チェコの伝統藍染めを2013年から紹介しているヴィオルカ代表の小川は、チェコ・プラハで学び、これまで、ミュシャに関する展覧会に翻訳者としてかかわることができ(「アルフォンス・ミュシャ~憧れのパリと祖国モラヴィア」展カタログ(2007年)「知られざるミュシャ展-故国モラヴィアと栄光のパリ」展カタログ(2013年)など)、特にチェコの研究者の論文を翻訳する機会に恵まれました。そこで、これから、少しの間、チェコとのかかわりで知ることのできたミュシャとその作品について、いろいろなことをお話ししたいと思います。どうぞお付き合いください。

《スラヴ叙事詩》とは?

ミュシャが1911年から1928年、17年にわたって描き上げた全20点の絵画作品です。油彩と卵テンペラという技法で、キャンバスの上に描かれたものです。

特筆すべきは、作品のサイズです。すべてがとっても大きなものなのです。最も大きなもので、6.0 x 8.0メートル、最も小さなもので、4.05 x4.80mあります。実は、制作中に第一次世界大戦が勃発し、材料の手配が難しくなったようなのですが、たしかに1914年を境にして作品のサイズが6.0x 8.0メートルよりもやや小さくなっています。

この20点の作品のうち、実は、1点だけは、チェコから日本に貸し出しされたことがあるんですよ。1995年に東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムなどで開催された「アルフォンス・ミュシャ 生涯と芸術」展で、「聖アトス山」(1926年)という20点の連作中、もっとも小ぶりな作品が出品されました。

Alfons Mucha 1860 - 1939, Slav Epic 1910 - 1928 18 Mount Athos 1926 Sheltering the Oldest Orthodox Literary Treasures Egg tempera and oil on canvas, 405 x 480 cm, unsigned National Gallery Prague, Testus 2009 commons.wikimedia

しかし、この大きな作品をどのようにチェコから日本まで運ぶのだろうと思われる方もいるかもしれません。ミュシャはこの作品を「スラヴ民族の歴史の教科書」として世界中に運んで、スラヴの歴史を世界中の人々に見てもらうということを念頭に制作していたと言われます。作品は、頑丈な枠に絵の描かれた画布をロープでしっかり張るという方法で展示されます。ですから20点の作品は、枠から外し、くるくると丸めて温湿度調節のできる筒に収められ、安全上の理由から3便に分けて飛行機で日本にやってきます。とはいえ、これだけの大きさの作品ですから、展覧会主催者のご苦労はたいへんなものでしょう。会期に合わせ、無事に届くことを祈ります。

今日は、このへんで。続きをお楽しみに。

プラハでの展示の様子

By Jiří Sedláček Centrální část Slovanské epopeje ve Veletržním paláci, Praha, 2013 commons.wikimedia