チェコの籠作りの地を訪ねて

一般にバスケタリー(籠編み・籠作り)と呼ばれる技法は、もっとも初期的な織物の技法のひとつで、世界中に普及し、今でも用いられているものです。藍染めと同じですね。

チェコ在住時、柳の枝で編んだバスケットの素朴さや温かみのある雰囲気に魅かれて、行李のような衣装入れやランドリーバスケット、パン用の籠、買い物用の籠、インテリア用の籠などたくさんの籠を買って、帰国してからも愛用しています。チェコで見つけた藍染めと同じくらい好きなものです。

けれどもチェコのバスケタリーの中心地はどこだろうと思いながら、在住時にはついぞ訪ねたことがなく、やっと最近訪れる機会を得ました。その時に考えたこととあわせて、紹介したいと思います。

訪れた場所は、クロムニェジーシェ近郊の町、モルコヴィツェというところです。


モルコヴィツェでは、18世紀前半から籠作りがはじめられました。籠作りの職人がこの地にやってきて、技法を広めたこと、またこの土地の領主(貴族)が魚の養殖のために作った湖沼で育つ柳が材料として豊富だったため、籠作りが盛んになったそうです。職人は籠編みのかたわら、近郊の町に立つ市に籠を売りに出かけます(藍染め職人も同じように染めた布を市で売ったり、注文を取ったりしていました)。その品質も折り紙付きで、最盛期にはヨーロッパ中やアメリカにまで輸出されていたというので驚きます。

現地には小さな博物館があり、管理人さんが案内してくれました。18世紀、籠作りは冬の間の仕事で、農業の閑散期にその作業が行われました。写真は農家の作業の様子で、籠作りのためのたくさんの種類の道具も見られます。


材料となる柳も博物館の中庭にちょうど生えていました。柳の枝は葉を取り、水につけ、皮をはぎ、乾燥させてという作業を経て籠編みに使われます。皮をはいだ柳の枝は、乾燥させると赤身のかかった茶色になります。

以前チェコで購入したバスケットはとても丈夫で、20年近くたっても形も崩れず、痛みもなく、経年変化していい色になってきました。チェコでは柳が籠編みに十分な大きさになるまで丸一年かかります。暖かい地域では3か月ほどの期間で刈り取った柳を使いますが、1年かけて育てた柳の枝の中心の繊維は大変固く、そのためチェコのバスケットは丈夫なのだといいます。確かに様々な生活用具、椅子などの家具類やトランクまで作られていたのですから、その丈夫さが分かります。


しかしながら、かつてのモルコヴィツェの籠作りの活況は、現在、もうありません。職人も数えるくらいしかおらず、籠作りをかつて教えていた教育機関も閉鎖され、そこで学んだ最後の世代が残るのみになっているという現状を、地元で籠作りから起業して、現在はインテリア販売会社を作った社長さんが教えてくれました。社長さんの奥さんも籠作りの名手で、1960年代ごろには、どの家庭にもあった裁縫箱の制作を多くしていたそうですが、今はその需要もなく、扱うインテリア用品もほとんどが中国製になってしまったそうです。

博物館には18世紀のモルコヴィツェの籠編み職人のギルドの一種(同業組合のこと、この場合は手工業品の製造や販売の独占権を持つ組合)が所有していた籠作りの守護聖人、聖ドロテアと聖マカーリアを彫った紋章や、お金や重要書類を保管した箱(1739年から伝わるもの)が大切に残され、かつての籠作りの伝統や活気を伝えています。

ヴィオルカはチェコの藍染めを日本に紹介する活動を行っていますが、藍染めはユネスコの無形文化遺産に登録され、数少ない職人の仕事に脚光が当たり始め、今後の生き残りのチャンスを得ました。しかし一方で、チェコには籠編みのように消えつつある地域の伝統手工業もあります。

対照的な伝統に思いをはせ、伝統を守るために何か必要なのか、どうしたらいいのか、みなさんにも考えていただければうれしいです。

なお、日本の方にチェコの籠作りの伝統を知っていただきたく、現地の職人さんに頼んで、ミニサイズの籠を作ってもらいました。よかったらチェコの伝統を生活の中で役立ててみませんか。


チェコの藍染めヴィオルカのオンラインショップはこちら

https://violka.handcrafted.jp/



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